タイトルはいつぞや開催された、ルネ・マグリットの展覧会で
一際強く印象に残った絵画の名前である。
作品名だけで想像すると、どれほどおどろおどろしい作品なのかと
身構えてしまうが、そこにあるのは絵画一面に広がる青空なのである。
拍子抜けするとともに、作品名のプレートが誤っているのではないかと
思ったがどうやら間違っていないらしい。
これは何に対しての呪いなのか。絵画の前でしばらく考え込んでしまった。
前述したとおり、作品名だけを見た際には名前に相応しい
暗く、恐怖に満ちた作品を期待したが
言葉のイメージに縛られてしまっている自身の固定概念こそが
「呪い」なのではないかと考えた。
またこの作品を観て未だに忘れられず、記憶に残り続けていることも
また一つの「呪い」なのではないだろうか。
学生時代の美術の授業で、
「教科書に掲載されている作品の中から最も気に入ったものを発表する」
というお題があり、その時選んだのも偶然にも
当時選んだ理由を何て回答したか忘れてしまったが
今見てもなお、作品が持つ非現実感に心惹かれるので
おそらくそういったことを言ったのであろう。
きっと当時から私はルネ・マグリットの作品に惹かれていたのだろう。
脳に収納されている知識としての記憶は案外忘れてしまうものだが
五感に残る記憶というのは中々消えないものだ。
音楽や、料理の味、香水の匂いなどそれに触れれば
その頃の情景や感情が鮮やかに思い出せる。
その全てが美しい思い出とは限らず、
中にはほろ苦いものもあったりする。
あの苦々しい感情を思い起こさせる、これもある種一種の呪いだろうか。